ここでは三相誘導電動機のスターデルタ始動法について解説しています。この他、三相誘導電動機における同期速度や回転速度、回転方向についても解説しています。
目次
三相誘導電動機とは
三相誘導電動機は, 構造がシンプルなため、取り扱いがしやすい電動機となっています。
また、電動機の中でも安価ですが丈夫なため工場の工作機械やエレベータ等で幅広く活躍している電動機です。
この三相誘導電動機にはかご形と巻線形の2種類があります。特に広く使われているのは三相かご形誘導電動機です。
構造は, 固定子と回転子というものからなり、それぞれ磁界を作る役割と回転する役割を持っています。回転子は巻線が巻かれている固定子の中に入っています。
かご形の電動機の中には磁石のN極とS極があり、このN極とS極で発生する磁界の中にかごの形をした導体を設置して磁石を右回りに回転させます。
磁石が回転したことによって発生した磁界を回転磁界といいます。
また、磁石が回転したことによって起電力が発生します 。このことにより電流が流れて磁界の中にあるかご形の導体に電磁力が発生し、導体が磁石の回転方向と同じ向きに回転し始めます 。
三相誘導電動機の同期速度と回転速度
三相誘導電動機の固定子に巻かれている巻線に電流(三相交流)を流すと, 回転磁界が発生します。
この回転磁界の回転速度を同期速度といいます。この速度は,電源の周波数および電動機の磁極数で決まります。
ここからは同期速度に関する式について説明します。同期速度Ns[min-1] は, 電源の周波数をf[Hz], 電動機の磁極数をP[極] で表すことができ、式にすると
Ns=120f/P [min-1]
となります。
また、三相誘導電動機の実際に回る部分は回転子ですが、この回転子の回転速度は同期速度より少し遅れて回転します。
この遅れることをすべりといいます。 このすべりsを回転速度NR[min -1]と同期速度Ns[min-1]で表すとすると次の式で表せます。
s=(Ns-NR)/Ns
ここから回転速度NRを求めたい場合は
NR=Ns(1-s)
として、先程Ns=120f/P を代入すると
NR=(120f/P )×(1-s) [min-1]
で表すことができます。
三相誘導電動機のスターデルタ始動法
三相誘導電動機を動かす場合、 始動時の定格電流は安定時の定格電流の4~8倍の電流が流れます。 よって始動時の電圧降下が大きいので, 電動機の巻線の焼損や他の負荷への負担がかかります。この対策として始動時の電流を抑制するやり方があります。それがスターデルタ始動法です。
この始動法ではスターデルタ始動器を使用します。始動の際、スイッチをスター結線側にします。
これによって電源電圧は通常の1/√3の電圧になりこれを固定子巻線に加えます。
こうすることで電流は1/3にまで落とすことができます。このことによって電動機やその他負荷への負担を減らすことができます。
始動後、回転子の回転速度が上昇し一定の速度(定格速度)付近までに達したらスイッチをデルタ結線に切り替えます。
スターデルタ結線に関して下記記事でも解説していますのであわせてご覧ください。
三相誘導電動機の回転方向
三相誘導電動機の回転方向を逆転させる方法として 電源側の3本線のうち, いずれか2線を入れ替えます。これによって回転方向が反転します。
以上、三相誘導電動機のスターデルタ始動に関する説明でした。
この他にも電気に関する記事をあげていますので下記の記事もあわせてごらんください。