宅建士試験では必ず「相続」に関する問題が出題されます。その中で「相続分」と「遺留分」が出てきますが、どのような違いがあるのかを覚えている必要があります。
この記事では相続分と遺留分についてまた、その違いについても解説していきます。
目次
相続分とは?
相続分とは被相続人が死亡した後、相続人がもらえる取り分のことです。
直系卑属+配偶者
例えば、
父親Aと母親Bがいたとして、その子供C、D、Eがいたとします。
わかりやすいように図で表してみます。
上図から父親が被相続人で死亡してしまった場合、
相続人は母親B、子供C、D、Eの4人となります。
そして父親には遺産が6,000万円ありました。
相続分はそれぞれ
母親B:3,000万円
子供C:1,000万円
子供D:1,000万円
子供E:1,000万円
となります。
この相続分は民法で決められており
配偶者1/2 + 直系卑属1/2
となっています。上記での配偶者はもちろん、母親Bであり、直系卑属は子供たちであります。
遺産6,000万円の半分は母親が受取り(配偶者1/2)、残った半分の3,000万円は子供たちが受け取ります(直系卑属1/2)。
子供は3人いるので3等分して子供1人につき1,000万円と言うことになります。
計算式にすると
母親B:6,000万円 × 1/2 = 3,000万円
子供C:6,000万円 × 1/2 × 1/3 = 1,000万円
子供D:6,000万円 × 1/2 × 1/3 = 1,000万円
子供E:6,000万円 × 1/2 × 1/3 = 1,000万円
となります。
直系尊属+配偶者
直系卑属に関して説明しましたが、次は「直系尊属」に関して説明していきたいと思います。
下図に直系尊属の図を示します。
上図において、AとBの間には子供はいませんが、Aの両親である祖父Fと祖母G、兄のHがいます。
父親Aが死亡した場合、まず相続人はB、F、Gが相続人となります。この場合、兄は相続人にはなれません。
民法ではAから見てFとGは「直系尊属」という言い方をします。
配偶者と直系尊属の相続分の割合は
配偶者2/3 + 直系尊属1/3
となります。
上記の図から相続分はそれぞれ
母親B:4,000万円
祖父F:1,000万円
祖母G:1,000万円
となります。
兄弟姉妹+配偶者
次に兄弟姉妹ですが、この場合は死亡した被相続人Aからみて子供(直系卑属)も親(直系尊属)もいない場合に成り立ちます。
配偶者と兄弟姉妹の相続分の割合は
配偶者3/4 + 兄弟姉妹1/4
となります。
上記の図から相続分はそれぞれ
母親B:4,500万円
兄H:1,500万円
となります。
遺留分とは?
次に遺留分ですが、
遺留分とは相続人になりうる人達に認められ、遺言でも侵害できない最低限の遺産を取得できる取り分のことです。
もう少し具体的に言いますと、
例えば、本来であれば相続分が子供等の相続人(相続人になりうる人)に入るのですが、
被相続人が死亡する前に相続人でない人に遺産を渡すと遺言で書いていました。
これだと相続人に遺産が入らないので、相続人にも最低限の遺産を残しておく為の取り分として遺留分があるのです。
上記の説明で「最低限の遺産」と出てきましたが、では実際どの程度なのでしょうか?
遺留分で相続人が受け取れる割合は
・兄弟姉妹:遺留分はない ・直系尊属だけが相続人:遺留分は遺産の1/3 ・それ以外(直系卑属+配偶者or直系卑属のみor配偶者のみ):遺留分は遺産の1/2
となっています。
兄弟姉妹には遺留分がないので上図でいうとZさんに遺留分の主張はできません。
よって遺産6,000万円は全額Zさんに行きます。
直系尊属が相続人の場合は
6,000万円 × 1/3 = 2,000万円
が遺留分となり、Zさんには4,000万円が入ります。
兄弟姉妹、直系尊属以外 は
6,000万円 × 1/2 = 3,000万円
が遺留分となり、Zさんには3,000万円が入ります。
相続分と遺留分の違い
相続分と遺留分をまとめますと
相続分:被相続人が死亡した後、相続人がもらえる取り分のこと 遺留分:被相続人が遺言で相続人以外に遺産を渡してしまう場合、 遺言でも侵害できない遺産の取り分のこと
という事になります。
「相続分と遺留分」と聞くと何の違いがあるのかわかりにくいですが、もう少しざっくりとした言い方をするのであれば
相続分は相続人の中での話で、遺留分は遺言で相続人以外が登場する話と思えばわかりやすく、覚えやすいかもしれません。
相続は相続人が多くなるほどややこしくなります。また、被相続人が遺書を残せば遺留分が発生する可能性もあります。
相続分・遺留分の違いは、と聞かれて簡単に答えられる程度に覚えておくようにしておいた方が良いかもしれません。
また、下記のURLに相続における単純承認と限定承認についての記事も合わせてご覧下さい。