宅建士試験は取得時効・消滅時効が出てきます。これらは所有権や債権などの権利の種類によって違いが出てきます。また時効の期間も取得時効と消滅時効で違います。
宅建士試験を受験されるかたにとってはややこしい分野です。今回はこの分野をわかりやすく説明していきます。
目次
そもそも時効ってなに?
よく「もう時効だからなしだ」と言う言葉を聞きますが、これはある状態が起こり、ある期間が来たらその状態は消えてしまうことを指します。
例えるのなら、お客さんが居酒屋で飲んだ後に「マスター、この飲み代ツケにしておいてよ」と言った場合、本来であれば後日、そのツケを支払わなければなりません。
しかし、ある期間が過ぎたらそのツケは消えてしまう事になるのです。
これが時効です。
取得時効と消滅時効ってなに?
時効には「取得時効」と「消滅時効」の2つが存在します。上記でツケの話をしましたが、これは消滅時効に当たります。
取得時効はその名の通り、時効で実際に起きている状態を取得することができることで
消滅時効もその名の通り、時効で実際に起きている状態が消滅することです。
もうすこし具体的に言いますと
取得時効は他の人のものを自分が「これは私のもの」と考えて使っていると時効で他の人ものが自分のものになると言うことです。
「他の人のものを自分が「これは私のものだ」と考えて使っている」という状態が実際に起きている状態を指します。
消滅時効はずっと借りたお金を返さないと時効で返さなくてよくなることを言います。
「借りたお金を返さない」という状態が実際に起きている状態を指します。
取得時効と消滅時効の具体的な違いってなに?
上記で取得と消滅のおおまかな違いはおわかり頂けたと思います。ここではもう少し具体的な違いを説明します。
上記の取得時効では「他の人のもの」と出てきましたがこの「もの」と一体何かというと
家や車と言ったものです。これらを「これは私のものだ」と所有する意思をもつことによって、ある期間使い時効が完了した後、取得することができます。
つまり所有する権利(所有権)を取得することができるのです。
一方、消滅時効はツケの話でも出てきたとおり、基本的にお金のやりとりでこの時効がでてきます。居酒屋のマスターがお客さんに「お金を払ってください」という権利を債権と言います。
(債権について知りたい方はこちらを参照してください「債権と債務ってなに!?違いはなに?」)
お客さんがある期間ツケを払わず時効が完了した場合、マスターは債権が消滅し「お金を払ってください」と言えなくなるのです。
これらのことから、取得時効と消滅時効の違いは以下の表となります。
上記の表から所有権は取得ができます。そして債権は消滅します。そして地上権、地役権、は取得時効・消滅時効、共に共通です。
取得時効で取得できるある期間ってどのくらい?
他人のものを「私のものだ」と意思を持って使うとなるとその人はそのものが他人のものだと知らずに過失無く使っている(善意無過失と呼ぶ)場合と知っていて使っている(悪意と呼ぶ)場合の2通りがあります。
善意無過失と悪意(または善意有過失)の場合、その人が取得できる為に要する期間が変わってきます。
・善意無過失の場合は10年間 ・悪意(または善意有過失)の場合は20年間
となっています。
また、善意無過失については、ものの使用開始時点で善意無過失であれば、10年で取得することができるので、使用開始以降に悪意になったとしても10年から20年にはなりません。←ココ重要!
消滅時効で消滅するある期間ってどのくらい?
取得時効では善意・悪意で期間が異なりましたが、消滅時効の場合は
・債権の場合、原則10年間 ・地上権・地役権等は20年間
となっています。債権は原則10年間ですが、例外もあって、支払期限を過ぎて裁判を起こし、勝訴すると勝訴が確定された時点から時効期間が10年間延長されるのです。
つまり、居酒屋のマスターが裁判でお客さんに勝つとお客さんの消滅時効は10年延びて、お客さんはマスターからその期間「ツケを支払ってくれ!」と言われ続けてしまうのです。
取得時効と消滅時効の分野は違いがわかりづらく、ややこしい分野であるので今回は図や表を多く使用して解説してみました。お役に立てれば幸いです。